2011.01.13
第3回「千葉県・芝山はにわ祭り」前編
「あ~お~う~え~い~~。か~こ~く~け~き~~。さ~そ~す~せ~し~~~~。」
日も暮れかかろうとする頃、ようやく迎えた祭りのエンディング。
時折、飛行機の騒音にかき消されながらも、古代人から、現代人へのメッセージが、読み上げられる。
「た~と~つ~て~ち~~。な~の~ぬ~ね~に~~~。………」
私とウクレレさんは、『レイダース 失われたアーク』のように言葉を失った……。
成田空港のすぐ南に位置する芝山町で年に一度開催される、古墳ファン注目(?)の「はにわ祭り」。 今年で28回目を迎えるその祭りを目撃しようと、会場の芝山公園に、ウクレレさんと辿り着いたのは、昼すぎ頃であった。リンゴ飴や、焼きそばの屋台が並び、風船を持った家族連れなどでにぎわう、ごくフツ―の祭りの光景。
広場では、女性演歌歌手が熱唱している。
「あの演歌の人、ステージから客席に降りて、前の方で頑張って歌ってますね。よくあるんですよ、ステージと客席が離れすぎてる場合が。あれ、凄くやりづらいんですよね」
サウナの仮眠室、大雪の中での屋根のない野外ステージ、インド人だらけのカレー屋のパーティー。営業百戦錬磨のウクレレさんが心配そうに見守る中、彼女は無事に坂本冬美を歌い終えた。
ステージでは、この後休憩を挟んで、ウルトラクイズが始まるようだ。
「ゾノさん、ウルトラクイズですよ!どうします?」
思わず参加しようとするウクレレさんを制して、プログラムで予定を確認する。
祭りのメインである、古代人の儀式は、朝9時半にスタート。神官が祝詞を上げると、公園近くの殿塚・姫塚古墳に、古代人のリーダーである国造(くにのみやつこ)とその一行が降臨。現代を憂い、来臨した国造からのご託宣、それを受けて町長の挨拶があり、巫女の舞や、地元に伝承する踊りなど、古代人を歓迎する儀式が、すでに午前中に行われていた。
一番の見ものである、古代人一族の行列が始まるまで、少し時間があったので、隣接するお寺・芝山仁王尊の「はにわ博物館」に入る。
”はにわの里”芝山町の古墳で出土した、人物・動物・家など100点を超える形象埴輪がぎっしりと展示されている。日本最大級165の「背丈の高い男」や、前掛けのようにたくわえた「豊かなひげの男」、長さ136の飾り馬など、ナマで見る大型埴輪は強烈なインパクトに「ここ凄いわあ、あ、TOTOがいる、こっちは、『七人の侍』の長老だ~」と、ウクレレさんも感嘆の声を上げる。
姫塚古墳には、これらの埴輪が壮大な行列となって、頂上に並べられていたようだ。
「ゾノさん、何か、手が汚れてるけど、それ土?」
「え、あっ、しまった~」
見とれているうちに、むき出しのまま置かれていた土器に触れてしまったようだ。慌てて手を拭い、早足で階段を上がる。
2階では、釈迦の一生を描いた絵画展示があり、ガリガリになりながら、三人の裸女の誘惑に耐える修行時代の姿など、こちらも印象深かった
「うわっ!古墳マグカップだ!」
ウクレレさんは売店で今回も古墳マグカップとはにわ携帯ストラップを購入。
ホントこの人、グッズに目がない。
博物館を出ると、寺の境内に勢ぞろいした古代人の行列が、ちょうど出発していて、我々もその最後尾につく。
傘持ちの女性を従えた、勇壮な顔つきの国造を中央に、頬と唇を紅く塗った、可愛いこども古代人たち約50人が芝山飴を配りながら、町内を練り歩く。沿道の人たちの声援を受けて、時どき向けられるカメラにポーズを取り、楽しそうに進んでいく。我々も、ひとつかみ飴をもらい、行列の後を付いて歩く。
「取材の方ですか?」
こども古代人に飴の配り方を指示する、スタッフらしき男性が声を掛けてきた。中学生の時に、こども古代人として参加して以来、今もОBとして、祭りに関わっているらしい。ウクレレさんが質問すると、祭りの内情を、気さくに話してくれた。
はにわ祭りは、70年代の長く激しい成田闘争で、空港建設賛成派と反対派に、真っ二つに割れていた芝山町民の心を、”何か明るいことをしてひとつにしよう”という掛け声のもと、28年前に生まれたという。
「うーん。はにまるタワーの事業仕分けといい、ここのはにわ祭りといい、古墳と政治は繋がってますなあ」
空港工事の土地から大量に出土した埴輪が、”人々にふれあいの気持ちを取り戻す”祭りのシンボルに選ばれた。先ほどの博物館で見た、大型埴輪の行列が、そのまま今、再現されている。
「ちなみに、ここ、僕の家です」
「え、古墳に住んでるんですか?」
上空を飛行機が通り過ぎていく。
「この飴、素朴で美味しいですね。地元のみなさんの手作りですか?」
「いえ、違います。その飴、鹿児島から取り寄せた飴なんです」
「え、鹿児島?」
「鹿児島のいも飴です。一応、芝山飴と呼ばれてます」
なぜ鹿児島?
公園の広場に戻った行列は、いったん解散し、こども古代人たちは、それぞれ好きな屋台に散らばっていく。
広場の脇に、もうひとつの博物館があった。
「お寺の中にあるのが『はにわ博物館』で、これが『古墳はにわ博物館』。こっちは、町立でお金がないから、埴輪もレプリカばっかりですけど、見ていって下さい」
次々と、祭りの内情をばらしてくれる、古代人ОBが入口まで案内してくれた。
「縄文クッキーも試食出来ますよ」
「縄文クッキー、なう!」
ウクレレさんは小走りで博物館に入っていった。
(後編につづく)
ウクレレ芸人。
1月18日三重県生。
みうらじゅん氏に世界でただ一人の『人間僕宝』に認定されたウクレレ芸人。
ウクレレの弾き語りで、「マニアックでごめんネ!」のフレーズで、B級映画のワンシーンや、高倉健、ケーシー高峰などのマニアックなものまねを99連発する芸は圧巻。
99曲入り1stソロCDアルバム『ウクレレ番外地』(ビクターエンターテインメント)、健さん(ウクレレえいじ)が不器用解消のためにウクレレを習うウクレレ教則DVD『笑ってマスター!ウクレレえいじのもっと楽しいウクレレ』(リットーミュージック)も好評発売中。
また、ウクレレ奏者としても定評があり、サザンオールスターズ関口和之氏、CHAGE氏(チャゲ&飛鳥)らとレコーディングやライブなどで共演している。
ゾノネム
フケ専ラッパー。
代表曲に「早漏2005」「夢~ドリーム~」「虹」。
『ザンジバルナイト in 野音』にてグレートOと3年連続オープニングアクトを務める。
カラオケの十八番は安室奈美恵の「Chase the Chance」(ただし、100回以上歌っているが、いまだに2番のラップが苦手)。
好物はナン(カレー少なめ)。